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魔王「なぜワタシがこんな人間じみた容姿をしてると思う?」


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1: 名無しさん@おーぷん

魔王「それとも。まだ私が魔王だって信じられない?」

勇者「……この禍々しい魔力、まちがいなく魔王のそれだ」

魔王「私もあなたが勇者だって本能的にわかる。
   そしてそれは、あなたも同じようね」

勇者「だけど、どうして? なんで魔王が人間のすがたを?」

魔王「そんなに私の見てくれが重要?」

勇者「当然だ。魔王が人と寸分変わらないすがたをしてるなんて」

勇者「そんな話、聞いたことがない」


2: 名無しさん@おーぷん
綺麗な顔してるだろ?
これ死んでるんだぜ

3: 名無しさん@おーぷん
人間を一番殺したのは人間なんだよな

4: 名無しさん@おーぷん

魔王「やっぱり人間ってなり形にこだわるのね」

勇者「……」

魔王「腰が細いほうがいい。足は小さいほうがいい」

魔王「人間の女ってたいへん。私だったら耐えられないわ」

魔王「まあ、容姿にこだわるのは人間だけじゃないけど」

勇者「魔王が人間について語るなんて、滑稽だな」

魔王「滑稽、ね。滑稽なのはあなたでしょ?」

勇者「なに?」

魔王「自分がなぜ旅をさせられているのか。
   自分がなぜ魔王をたおさなければいけないのか」

魔王「あなたは考えたことがあるの?」

5: 名無しさん@おーぷん
なん…だと…

6: 名無しさん@おーぷん

勇者「なにが言いたい?」

魔王「勇者と魔王の争いは仕組まれていた」

魔王「人間によってね」

勇者「……」

魔王「『なにを言ってるのかわからない』って顔ね」

勇者「さっきからお前はなにを言ってる?
   人間がそんなことをする理由が――」

魔王「あるのよ。人間には。
   勇者と魔王の争い。それを仕組む理由がね」

勇者「僕がお前の言葉を信じるとでも?」

魔王「あなたは、すでにヒントを見つけてるのよ」

7: 名無しさん@おーぷん
これは久々に期待したくなるスレ

8: 名無しさん@おーぷん
逃避行なの

9: 名無しさん@おーぷん
まおゆうの二番煎じなのか?

10: 名無しさん@おーぷん

魔王「そして答えなら目の前にある。勇者、あなたの目の前にね」

勇者「目の前?」

魔王「そう。人のすがたをしながら、魔王である私」

魔王「この私の存在が、すべてを証明する答えなのよ」

11: 名無しさん@おーぷん

勇者(そもそもこの女は)

勇者(パーティーを失った僕のために、派遣された尼僧じゃなかったのか?)

勇者(その女が魔王だった?)

勇者(なのに、どういうことだ?) 



魔王「さて、振り返ると言っても。
   全てを振り返っていたら時間がもったいない」

魔王「重要な部分だけを、切り取っていきましょ」

12: 名無しさん@おーぷん
ここからどうなるか

13: 名無しさん@おーぷん
そもそも魔王なんていないからなw勇者も

14: 名無しさん@おーぷん




勇者「あなたが派遣された尼僧、ですか」

尼僧「お会いできて光栄の至りでございます、勇者様」

勇者「そんなふうに畏こまらないでください」

勇者「僕はあなたの想像してるような勇者じゃないだろうし」

尼僧「たしかに。私の想像していた勇者様とは、かけはなれてますわ」

尼僧「顔色もパンみたいです」

勇者「……朝の顔はいつもこんな感じです」

勇者「そんなことより、今後の旅のことについて話をしたい」

尼僧「あっ、その前にコーヒーの注文してもいいですか?」

勇者「……どうぞ」

15: 名無しさん@おーぷん
しえん

16: 名無しさん@おーぷん
おっ始めたんか
楽しみにしてるよ

17: 名無しさん@おーぷん

尼僧「勇者様も眠気覚ましのために、飲んでは?」

勇者「コーヒーは甘いものがないと飲めないんで、ミルクなら」

尼僧「奇遇ですね」

尼僧「私もコーヒーは、必ず甘いものと摂取するようにしてます」

勇者「はあ」

尼僧「そのほうが、コーヒーのうまみも引き立ちます」

勇者「……朝から食事の話はしたくないです」

尼僧「あら。これは失礼」

勇者「今後の旅の話をしましょう」

18: 名無しさん@おーぷん
ブラックとチョコの組み合わせは最強やで!

19: 名無しさん@おーぷん

勇者「魔王討滅の旅はあまりにも過酷です」

尼僧「そうらしいですわね」

尼僧「勇者様一行の旅の記録、『冒険の書』を何冊か拝読したことがあります」

尼僧「ですが。実際のそれとは、ずいぶんちがうようで」

勇者「しょせん『冒険の書』は娯楽。現実とはちがいます」

勇者「歴代の勇者で、教会送りにならなかった者は誰ひとりいない」

尼僧「勇者様だけでなく、その勇者様のお仲間もでしょう?」

勇者「はい。それぐらい旅は過酷なんです」

20: 名無しさん@おーぷん

21: 名無しさん@おーぷん

尼僧「旅が過酷であることは、重々承知していますわ」

尼僧「勇者様の仲間のうちのふたりが、
   教会どころか、あの世に送られていることもね」

勇者「……」

尼僧「死からよみがえるというのは、いったいどんな感覚なんです?」

勇者「どうしてそんなことを聞くんですか?」

尼僧「死から逃れることは、私もできないので」

尼僧「普通は死んだら死ぬしかないんですよ、どんな生物も」

尼僧「あなたたちを除いて、ね」

勇者「……あの感覚を言葉で伝えるのはむずかしい」

22: 名無しさん@おーぷん
何でおーぷんにSS書くヤツは
オナニー臭がするんだろうな?

23: 名無しさん@おーぷん
僧侶じゃなくて尼僧ってところにこだわり感じる

24: 名無しさん@おーぷん

魔王「なぜ私がこんな人間じみた容姿をしてると思う?」

勇者「死んでから意識が戻ったときは、
   自分のからだが自分のものじゃないみたいで」

勇者「絶えず、違和感がつきまとう」

勇者「しいて言うなら、魂が肉体にとまどっているような感覚です」

尼僧「なるほど」

尼僧「神と契約した勇者様一行は、
   肉体の一部があれば、魂の復活が可能と言われてます」

尼僧「しかし、魂のありかである肉体がなければそれも不可能」

尼僧「戦士様と賢者様は、肉体の一部すら残らず亡くなったそうですね」

尼僧「勇者様の魔術のせいで」

勇者「……僕は自分の魔力をまともにあやつることができません」

25: 名無しさん@おーぷん
勇者は雑魚なんかな

26: 名無しさん@おーぷん

勇者「剣の腕なら誰よりも優っている自信はあります」

尼僧「自慢ですか?」

勇者「自慢です、幼少のころからずっと訓練を受けてきた」

勇者「勇者になるために」

尼僧「けれど。魔術の才能に関してはまるっきりなかった、と」

勇者「簡単な魔術だったら、問題はないんですが」

勇者「膨大な魔力を必要とする魔術になると、とたんにダメになる」

尼僧「魔王城に近づくほど、魔物は手ごわくなりますものね」

勇者「ええ。剣術だけではもはや、魔物に太刀打ちできない」

27: 名無しさん@おーぷん

尼僧「そして、いよいよ魔術が必要な状況になった」

尼僧「ところが、使ってみたら暴走して仲間を殺めてしまった」

尼僧「しかも、塵ひとつ残さず」

勇者「僕のせいで、あのふたりは……」

尼僧「勇者様、もうひとつお聞きしてもよろしいですか?」

勇者「なんでしょうか?」

尼僧「どうして魔法使い様を殺さないのですか?」

勇者「え?」

尼僧「魔法使い様は、現在この街の医療機関で治療中なんですよね?」

28: 名無しさん@おーぷん
珍しく礼儀正しい勇者だね

29: 名無しさん@おーぷん
尼僧っつか魔王ぶっちゃけてるなww

30: 名無しさん@おーぷん

尼僧「治療に時間をあてるなら、教会で復活させたほうが手っ取り早い。
   それに、魔法使い様の苦しむ時間も減りますよ?」

勇者「神に仕える身で、よくそんなことを言えますね」

尼僧「今は国に仕える身です」

尼僧「もう一度聞きます。どうして殺さないのですか?」

勇者「……」

尼僧「……このことは、とりあえず保留にしましょう」

勇者「僕は……」

尼僧「勇者様?」

勇者「いいえ、なにも」

31: 名無しさん@おーぷん

尼僧「そういえば最近は、
   教会による魂の救済を、命を弄ぶ所業と批判する知識人が増えてるとか」

勇者「『新教会人』たちのことですか?」

尼僧「そうそう、それです」

尼僧「神と契約してる勇者様たちにたいして、
   そんな批判をするのも、的外れな気がしますけど」

尼僧「そんな批判をなさるぐらいなら、
もっと批判すべきことがあると思いますし」

勇者「批判すべきこと?」

尼僧「勇者様たちだけに、魔王殺しの旅をさせていることです」

勇者「それは……」

32: 名無しさん@おーぷん
うん

33: 名無しさん@おーぷん
RPGのタブーに魔王が触れるんかい

34: 名無しさん@おーぷん

勇者「それは、仕方ないことです」

尼僧「仕方ない? なぜ?」

尼僧「国が兵力を注ぎこめば、魔王を滅ぼすことは不可能じゃないでしょう」

勇者「あなたの言うとおり、不可能ではないかもしれません」

勇者「でも、そうすることによる被害の規模は、はかりしれません」

勇者「魔王だけが人類の敵ってわけでもない」

勇者「人びとの生活をおびやかすのは、むしろその魔物たちです」

尼僧「つまり。街を守ることに兵士を割くから、
魔王討滅には回せない、と」

勇者「それだけじゃありません」

勇者「小規模ながら、人間どうしの戦争だってある」

勇者「だから僕たちだけで、魔王をたおすしかないんです」

35: 名無しさん@おーぷん

勇者「僕からも質問いいですか?」

尼僧「ええ、ぜひ答えさせてください」

勇者「あなたは勇者とその仲間を、
   どういうものと、とらえていますか?」

尼僧「あやつり人形」

勇者「……はい?」

36: 名無しさん@おーぷん

尼僧「ああ、ごめんなさい」

尼僧「アレです。窓から広場が見えますよね?
   ほら、人形師がマリオネットをやってます」

勇者「だから、なんですか?」

尼僧「はじめて見たので、すごく惹かれちゃって」

勇者「僕はあんなものに、興味をもてません」

尼僧「あら、残念」

尼僧「……勇者様の質問の答えですが、『英雄』でしょうか?」

勇者「英雄か。僕も最初は、そんな甘っちょろい考えをもってました」

尼僧「では、ちがうと?」

勇者「僕はこう考えます、暗殺者だと」

37: 名無しさん@おーぷん
仮に軍が魔王討伐に参戦したらどうなるんかね

38: 名無しさん@おーぷん

尼僧「暗殺者なのに勇者様一行が旅に出たことは、
   国民には大々的に伝えられてるんですね」

尼僧「下手したら、魔物たちも小耳に挟むかもってレベルで」

勇者「……あくまで、たとえです」

尼僧「あら。ちょうどコーヒーが来ましたね。んっ……」

勇者「なにをしてるんですか?」

尼僧「かおりを堪能してるんですよ。ああ、すばらしい」

勇者「かおり、か」

尼僧「とても素敵なかおりだと思いません?」

勇者「……よくわかりません、僕には」

39: 名無しさん@おーぷん
尼僧たんぺろぺろ

40: 名無しさん@おーぷん




尼僧「これからどうなさるつもりですか?」

勇者「とりあえず、道具屋で薬の類を購入します」

尼僧「道具屋で、扱ってる物で役立つものがあるんですか?」

勇者「どういうことですか?」

尼僧「勇者様と会うまでに、私もいくつか街の道具屋をたずねてますけど」

尼僧「戦闘中に使えるものはなかったはずです」

勇者「表向きには、僕たちが使う物は販売されていません」

尼僧「勇者様たちしか、購入できない物があるってことですね」

勇者「そういうことです」

41: 名無しさん@おーぷん
うんうん

42: 名無しさん@おーぷん
作られた世界系のオチか?

43: 名無しさん@おーぷん

勇者「傷口を一瞬で直せたり、解毒を数秒で終わらせたりできる薬が、
   世に出回ったら、確実に世の中は狂います」

尼僧「病院や癒しの術の使い手が、損をしますものね」

尼僧「しかし、どうやって勇者様であると店主に証明を?」

尼僧「なにか証明できるものがあるってことですよね?」

勇者「……あなたは、質問をするのが好きなんですね」

尼僧「あ、ごめんなさい。知りたがりなんです、私」

勇者「店に行けば、すぐにわかりますよ」

44: 名無しさん@おーぷん

つづく

45: 名無しさん@おーぷん


ファンタジー世界の病院って確かに存在意義が魔法のせいで微妙だよね
次の更新に期待

46: 名無しさん@おーぷん
待つ

47: 名無しさん@おーぷん
ふーん

48: 名無しさん@おーぷん
一言だけ:めっちゃ読みやすい!

49: 名無しさん@おーぷん
まおゆうのインスパイヤっぽいな

50: 名無しさん@おーぷん
どうせ最後は勇者と魔王がくっつくんやろ!
嫌いじゃないので砂糖多めで!

51: 名無しさん@おーぷん
俺って深いわー意識高い系だわー的な?

52: 名無しさん@おーぷん
文の書き方的にたまころもさんっぽいな

53: 名無しさん@おーぷん
予想はよそう

54: 名無しさん@おーぷん
>>53

55: 名無しさん@おーぷん
これは面白い

56: 名無しさん@おーぷん
こういうの好き

>>53
コピペか知らんがちょっと感心してしまった

57: 名無しさん@おーぷん
面白いです!

58: 名無しさん@おーぷん
>>56
・・・

59: 名無しさん@おーぷん
まだー

60: 名無しさん@おーぷん




店主「うちで扱ってる道具は、ここの物ですべてだ」

店主「購入する品が決まったら、声かけてくれ」

勇者「ありがとうございます」



尼僧「なるほど。勇者様はその右腕の刺青で、
   自分が勇者であると証明するんですね」

勇者「ええ。この刺青は、魔力によって彫られた特別なものなんです」

尼僧「そして、ここが勇者一行しか入れない場所」

尼僧「回復薬の類だけでも、様々なものがありますね」

尼僧「……ここの薬で魔法使い様の傷を、癒すことはできないのですか?」

勇者「この手の薬には、副作用があって。
   しかもその副作用が、完全には判明してないんです」

尼僧「つまり、重症を負ってる魔法使い様には使うわけにはいかない、と」

61: 名無しさん@おーぷん

尼僧「へえ。これは魔物を寄せつけなくする聖水」

尼僧「こっちは、逆に魔物を引き寄せる香水」

勇者「魔物を引きよせるものについては、正直使いどきがわかりません」

尼僧「……おどろきました」

勇者「え?」

尼僧「すでに魔物の対策として、ここまでのものが開発されてるなんて」

勇者「魔物の研究も年々進んでますし、
   おどろくことでもないと思いますけど」

尼僧「……魔物とはいったいなんなのでしょうね」

勇者「?」

62: 名無しさん@おーぷん
うむ

63: 名無しさん@おーぷん

尼僧「疑問に思ったことはありませんか?」

勇者「なにを?」

尼僧「魔物という存在についてです」

尼僧「犬や猫といった動物でもなければ、虫でもない。まして人間でもない」

尼僧「彼らはいったいなんなのか」

勇者「僕に聞かれても困ります」

尼僧「勇者様は魔物をどういう存在だと、とらえてますか?」

勇者「人類の脅威です」

尼僧「即答ですね」

勇者「当然です。人々にとっての共通認識ですから」

64: 名無しさん@おーぷん

尼僧「じゃあ逆に、魔物にとっての人類は?」

勇者「……知りません」

尼僧「すこしは考えてくださいよ」

勇者「余計なことを考えてる時間はないんです、僕たちには」

尼僧「なるほど。勇者様はそういう感じの人なんですね」

勇者「……なんですか、その目は」

尼僧「勇者様がどういう人か、ちょっとわかってきました」

勇者「あなたのことも、あなたの考えてることも、僕にはよくわかりません」

尼僧「あらまあ、それは残念」

65: 名無しさん@おーぷん
勇者マジメすぎだぞ

66: 名無しさん@おーぷん

尼僧「ところで」

尼僧「この聖水を用いれば、魔物に遭遇することなく旅ができるのでは?」

勇者「もちろん、不可能ではありません」

勇者「でも、聖水は魔物を寄せつけない強力な薬品です」

勇者「使用者である僕たちも、それ相応の影響を受けてしまいます」

尼僧「便利な道具にも一長一短があるわけですね。ふうむ」

勇者「ずいぶんと熱心に道具を見てますけど、なにか気になることでも?」

尼僧「……ああ、ごめんなさい」

尼僧「はじめて見るものに、すぐ夢中になってしまうんです」

尼僧「私の悪い癖です」

67: 名無しさん@おーぷん
右京さんかよ

68: 名無しさん@おーぷん

尼僧「その顔は、あまり共感してもらえてないようですね」

勇者「……今は考えられないんです、魔王をたおすことしか」

尼僧「勇者様って真面目だってよく言われません?」

勇者「急になんですか」

尼僧「思ったことを口にしただけです」

勇者「真面目というか。
   つまらないヤツだとはよく言われます」

尼僧「ああ、たしかに。
   って、ごめんなさい。ついうっかり」

勇者「べつにかまいません」

勇者「面白みのない人間だって自覚はあります」

69: 名無しさん@おーぷん




尼僧「次へ向かう場所は決まってるのですか?」

勇者「この街を抜けて、山を下って迂回したとこに集落があります」

勇者「まずはそこを目指します」

尼僧「ずっと気になってたんですけど」

尼僧「勇者様は、魔王の根城がどこにあるかを把握されてるのですか?」

勇者「えっと……これを見てください。国から特別に支給されたものです」

尼僧「地図帳ですね。中身を拝見してもよろしいですか?」

勇者「どうぞ」

尼僧「……すごい。ここまで精密な地図があるなんて」

70: 名無しさん@おーぷん

尼僧「魔物の生息地、街から街への最短ルートなど、事細かに記載されてますね」

勇者「この地図のおかげで、ここまではどうにかたどり着くことができたんです」

尼僧「つまり、言ってみれば。
   この地図は先代の勇者たちの、旅の足あとってわけですね」

勇者「まあ、そういうことでしょうね」

尼僧「だったら、賢者様と戦士様の死は回避できたのでは?」

勇者「それは……」

尼僧「わざわざ危険な魔物が潜む場所へ、おもむいたのですか?」

勇者「危険をおかしてでも、手に入れる必要があったんです」

尼僧「なにを?」

勇者「魔王をたおすための『勇者の剣』です」

71: 名無しさん@おーぷん
わざわざ地図まで用意してくれるとかいい国だな
でも普通に考えたら魔王倒しに行けって命令しといてお小遣い程度の金しか寄越さない
王様のがおかしいか

72: 名無しさん@おーぷん

尼僧「……『勇者の剣』?」

勇者「詳細は僕も知りません」

勇者「言い伝えでは、剣でありながら剣の形状をしてないそうです」

勇者「勇者の力を持つもの意外が触れれば、牙をむく危険な代物」

勇者「僕が知らされているのは、この情報と剣がある場所だけです」

尼僧「……それは、どこにあるのですか?」

勇者「この街から数キロ離れた洞窟です」

尼僧「その剣は絶対に必要なのですか?」

勇者「記録が正しければ、すべての勇者がその剣をたずさえて魔王へ挑んでます」

勇者「そして例外なく、その剣と勇者の前に魔王は殺されている」

73: 名無しさん@おーぷん

勇者「そう、本来なら剣は手に入れなければならない」

尼僧「……また洞窟に挑むのですか? 『勇者の剣』のために」

勇者「……」

尼僧「私は他の手段を考えるべきだと思います」

尼僧「今の状態では、無意味に同じことをくりかえすだけです」

勇者「……そう、ですね」

勇者「『勇者の剣』についてはいったん保留にします」

尼僧「魔法使い様のことも、考えなければいけませんしね」

勇者「……魔法使いは、教会に送ったほうがいいかもしれません」

尼僧「どうしたのですか、やぶから棒に」

勇者「……」

74: 名無しさん@おーぷん
>>71王様「魔王城の場所知らんけど魔王退治よろしく^ ^」

75: 名無しさん@おーぷん

勇者「僕とあなただけで、魔王に勝てるわけがない」

勇者「まして、剣が手に入らないならなおさらだ」

尼僧「だから魔法使い様を殺す、と」

勇者「……自分でも最低だと思います」

勇者「でも。これしか手段が浮かばないんです……!」

尼僧「魔王討滅のパーティーに参加するには、国王の許可がいる……」

尼僧「今から新たな人員を補充しようとすると、
   時間がかかりすぎるってことですね」

勇者「そういうことです」

76: 名無しさん@おーぷん

尼僧「空間転移の魔術などがあれば、またちがってくるのに」

勇者「あの術は使えませんよ」

勇者「時空移動の術は、大賢者クラスでようやく会得できるもの」

勇者「戦争の様相すら一変させる危険な術です」

尼僧「たしか、その術も国宝陛下の許可がいるのでしたっけ」

勇者「そうです」

尼僧「魔王をたおすのにも、様々な制約がついてまわるのですね」

勇者「国の、いや、人類の命運がかかってるんだから仕方がありません」

尼僧「しかし、そうなるとやはり魔法使い様を……」

勇者「……」

77: 名無しさん@おーぷん
尼僧「そこまでだ」
聞いたことのある声、寺生まれで霊感の強いTさんだ

78: 名無しさん@おーぷん
お。

79: 名無しさん@おーぷん
尼僧=魔王なんだよね?

80: 名無しさん@おーぷん

尼僧「また顔色が悪くなってません?」

勇者「気にしなくていいです」

尼僧「気になるから指摘したんですよ」

尼僧「魔法使い様よりも先に、勇者様が教会送りにされたりして」

勇者「……」

尼僧「そういえば、教会ってあれですよね?」

尼僧「なんだか人だかりのようなものが、できてますけど」

勇者「ひょっとすると、洗礼式かもしれません」

尼僧「幼児洗礼ですか」

81: 名無しさん@おーぷん

82: 名無しさん@おーぷん

尼僧「洗礼、ね」

勇者「どうかしましたか?」

尼僧「洗礼式を見るのはそういえば、はじめてだなって」

勇者「でも、洗礼そのものは確実に受けてるはずです」

勇者「洗礼を受けるのは、国民の義務のひとつになってますし」

尼僧「……勇者様、がんばらないといけませんね」

勇者「なにがですか?」

尼僧「だって、がんばらないと」

尼僧「あの教会で受洗した子どもたちの未来も守れませんよ?_」

勇者「未来を、守る……」

83: 名無しさん@おーぷん
そらしたのか

84: 名無しさん@おーぷん
そうか魔王だから洗練なんて受けてないんだな

85: 名無しさん@おーぷん
俺らは魔王サイドで話を見てるのか

86: 名無しさん@おーぷん

尼僧「なにか私、へんなこと言いました?」

勇者「え?」

尼僧「勇者様、なんだかキョトンとしてます」

勇者「そうじゃないんです」

勇者「魔王をたおすことは人々の未来を守ることにも、つながるんだって」

勇者「あなたに言われて、今気づきました」

尼僧「……勇者様って、魔王をたおすことしか考えてないんですか?」

勇者「勇者の存在意義は魔王をたおすことだって、僕は考えてたので」

尼僧「じゃあ聞きますけど、勇者様は魔王をたおしたらどうするんですか?」

87: 名無しさん@おーぷん

88: 名無しさん@おーぷん

勇者「……」

尼僧「……まさか、まったく考えがないんですか?」

勇者「その、まあ」

尼僧「呆れて物も言えないわ」

尼僧「真面目をとおりこして、ただの思考停止じゃない」

勇者「この旅をはじめるまでは、
   魔王をたおしたその先について考えたことあります」

勇者「でも、今は魔王をたおしたその先のことなんて……」

尼僧「……」

勇者「それに、魔王をたおしたあとの勇者については、
   記録を探っても見つからないんです」

尼僧「冒険の書にも魔王をたおすまでのことしか述べられてませんね、そういえば」

89: 名無しさん@おーぷん
おお

90: 名無しさん@おーぷん

尼僧「でも自分のことなんだから、他人のことなんて関係ないじゃない」

勇者「あなたの言うとおりです」

勇者「でも、勇者である僕の使命は魔王をたおすことだ」

勇者「与えられた役割も果たせない存在が、
   未来のことについて考えるなんて、虫がよすぎます」

尼僧「それは本気で言ってるの?」

勇者「冗談は苦手です」

尼僧「……そう」

勇者「……あの、どこへ行くんですか?」

尼僧「ちょっとひとりにさせてください」

91: 名無しさん@おーぷん
ぶつかってるなおい

92: 名無しさん@おーぷん
これはこの女じゃなくてもイラっとするわな

93: 名無しさん@おーぷん
生真面目過ぎて使命にがんじがらめにされてるな

94: 名無しさん@おーぷん




勇者(そうして、尼僧との邂逅から二日が経過した)

勇者(このあいだに彼女は、街を回っていたみたいだが)

勇者(体調を崩して眠れもしないのに、ベッドで眠っていた僕は)

勇者(彼女がなにをしていたのか、なにも知らない)

勇者(そして今日、唐突に彼女が僕の腕を引っ張って街を飛び出した)

勇者(街道をぬけ、森の奥へと進むと尼僧はおもむろに取り出した)

勇者(魔物を引きよせる香水を)

95: 名無しさん@おーぷん
ん?

96: 名無しさん@おーぷん
!?

97: 名無しさん@おーぷん

勇者「なにをやってる……?」

尼僧「ああ、もう演技する必要もないと思ってね」

勇者「答えになってない! なんでそんなものを!?」

尼僧「証明するためよ」

尼僧「私があなたの宿敵である魔王だってことをね」


勇者(目の前の女がなにを言ってるのか、理解できない)

勇者(そして困惑する僕を、気づけば大量の魔物たちが囲んでいた)


尼僧「一瞬よ、きちんと見てなさい」


勇者(尼僧の宣言どおりだった)

勇者(突如地面から現れた氷の突起が、一瞬で魔物たちを串刺しにしていた)

98: 名無しさん@おーぷん
おん?

99: 名無しさん@おーぷん
魔王でも呼び出しには道具がいるんだな

100: 名無しさん@おーぷん

勇者(同時に本能で理解した)

勇者(目の前にいるのは、人間じゃないと)

勇者(目の前にいるのはまぎれもない、魔王であると)



魔王「ほんのわずかな期間とはいえ、騙していてごめんなさい」

魔王「私が魔王よ」



勇者(たしかに肌に突き刺さる魔力は、魔王のそれだった)

勇者(だけど、なぜかその魔王は魔物のすがたをしていなかった)

勇者(かぎりなく人に近いすがたをしていた)

101: 名無しさん@おーぷん
そろそろ最初につながるのか

102: 名無しさん@おーぷん
回想から最初のシーンくるのか!?

103: 名無しさん@おーぷん




魔王「さて、ここまで簡単に振りかえってきたけど」

勇者「これでなにがわかるっていうんだ」

魔王「だから。これから私が説明してあげるって言ってるの」

勇者「……」

魔王「人間が、勇者と魔王の争いを仕組んだわけをね」

104: 名無しさん@おーぷん

つづく

105: 名無しさん@おーぷん
待とう

106: 名無しさん@おーぷん
今までの回想の中にヒントがあったのか
全然解らん

107: 名無しさん@おーぷん
さては仕組んだな

108: 名無しさん@おーぷん
ゲームじゃ勇者ボス倒した後はプレイできないのばかりだからな

109: 名無しさん@おーぷん
勇者を旅させるのはそうさせることで国の宣伝とかになるからじゃね
と予想してみたり

110: 名無しさん@おーぷん
人間の姿した魔王ってどの作品が最初なんだ

111: 名無しさん@おーぷん
まだかー

112: 名無しさん@おーぷん
待とう

113: 名無しさん@おーぷん
仮想現実オチでない事を祈る

114: 名無しさん@おーぷん
勇者と魔王が戦う理由ねえ…

115: 名無しさん@おーぷん

魔王「そもそもあなたは、腑に落ちないと思ったことはない?」

魔王「勇者と魔王の争いは、なぜ繰り返されているのかって」

勇者「決まってる、お前たちが存在するからだろうが」

魔王「そのとおり」

勇者「……認めるのか」

魔王「そう、あなたの言うとおり。だから、おかしいのよ」

魔王「どうして魔王が復活してしまうのを、人間は止めないの?」

勇者「それは……」

116: 名無しさん@おーぷん

魔王「そもそもあなたは、腑に落ちないと思ったことはない?」

魔王「勇者と魔王の争いは、なぜ繰り返されているのかって」

勇者「決まってる、お前たちが存在するからだろうが」

魔王「そのとおり」

勇者「……認めるのか」

魔王「そう、あなたの言うとおり。だから、おかしいのよ」

魔王「どうして魔王が復活してしまうのを、人間は止めないの?」

勇者「それは……」

117: 名無しさん@おーぷん

魔王「この香水のように魔物をひきつけるもの」

魔王「一方で、魔物を寄せつけない聖水なる薬品もあるわね」

魔王「こんなものを作れるのは、人間が研究を重ね、
   魔物についての知識を深めてきたからでしょう?」

魔王「それなのに、魔王復活に関してはなんの手も打たないの?」

勇者「そんなわけがない」

勇者「なんらかの対策は講じられているはずだ!」

魔王「たとえば?」

勇者「それは……」

魔王「私が国王の立場だったら、そうね」

魔王「魔王を殺したあとで、その土地に聖水をバラまいてみるわね」

勇者「そんなことをしたら……」

118: 名無しさん@おーぷん

魔王「もちろん。聖水は強力な薬」

魔王「その土地に悪影響を及ぼすことは、目に見えてる」

魔王「でもだからって、放置する理由にはならないわ」

勇者「放置してるんじゃない……!」

勇者「魔王城には魔王だけじゃない、凶悪な魔物たちが大量にいる」

魔王「だから?」

勇者「迂闊に手は出せない」

119: 名無しさん@おーぷん

魔王「そうかしら?」

魔王「魔王討伐の部隊をきちんと編成して、しかるべき対処をすれば、
   決して不可能ではないと思うけど?」

勇者「お前が言うほど簡単な話じゃない」

勇者「それ相応の犠牲は避けられない」

魔王「けれども。そうすることで、人類は自分たちの脅威を取り除くことができる」

魔王「魔物たちの縄張りを手中におさめることもね」

勇者「……」

魔王「あなたって、思ってることがすぐに顔に出るタチなのね」

勇者「なに?」

魔王「あなたも奇妙だとは、思ってたんでしょ?」

勇者「……だまれ」

120: 名無しさん@おーぷん
しえん

121: 名無しさん@おーぷん

魔王「この勇者と魔王の戦いというのは、どうにも奇妙な点が多い」

魔王「魔物、そして魔王は人類の脅威だなんて言われているけど」

魔王「あなたは、それを実感したことはある?」

勇者「あるに決まってるだろ。現に僕は旅で……」

魔王「ごめんなさい、言いかたが悪かったわね」

魔王「魔王討滅の旅に出る前。
   あなたの街は、魔物の襲撃を受けたことはある」

勇者「……おそらく、ない」

魔王「ないんだあ?」

勇者「なんだその顔は?」

魔王「べつに」

122: 名無しさん@おーぷん

勇者「……街には警備兵がいるし、魔物対策はきちんとされてる」

勇者「魔物たちだって、そうやすやすと手を出すことはできない」

魔王「ふふふ」

勇者「なにがおかしい?」

魔王「魔物は人類の脅威、だったかしら?」

魔王「人類の脅威なんて言うわりには、
   ずいぶん人間にとって都合のいい生物じゃない、魔物って」

勇者「魔王。お前にはわからないかもしれないが、魔物は……」

魔王「襲われれば危険、そう言いたいんでしょ?」

勇者「……」

123: 名無しさん@おーぷん

魔王「整備が行き届いていない場所だと、魔物もかなりいるわね」

魔王「でもね、そんな場所ばかりだったら人類はやっていけないわ」

勇者「そんなことはわかってる」

魔王「わかってるのかしらね」

魔王「じゃあこの地図を見てくれる?」

勇者「これは、国から支給されるものじゃないか」

勇者「なんでお前がこれを?」

魔王「私もいちおうは国の遣いなんだから、もってて当然でしょ?」

勇者「……今さらこんなものを見る必要はない」

魔王「いいから見て」

勇者「なんのために?」

魔王「生真面目なあなたなら、見れば気づくはず」

124: 名無しさん@おーぷん

勇者「こんなものを見たところで」

勇者「いや、これって……」

魔王「気づいた?」

勇者「僕がもらったものと、中身が……」

魔王「そう、あなたと私の地図は内容がところどころちがうのよ」

魔王「あなたのほうの地図は、魔物が出るルートばかりを、
   わざと通るように仕向けられていた」

勇者「な、なんで……」

魔王「過酷な環境や死と常に身近にある極限状態に晒されるだけで、
   人間はわずかな時間で成長できる」

魔王「まして、勇者ならその成果は常人のそれとは比較にならないわ」

125: 名無しさん@おーぷん

魔王「あなたたちを過酷な環境に置いておくために、
   その地図は支給されたのよ」

魔王「さらに、もうひとつ」

魔王「『勇者の剣』についても同じ」

勇者「『勇者の剣』?」

魔王「あの言い伝えも嘘、欺瞞よ」

魔王「魔王をたおすためのキーアイテムなら、当然手元に残しておくべきでしょ」

魔王「あなたたちを危険に晒すために、嘘をでっちあげたのよ」

勇者「……おかしい。おかしいじゃないかっ」

126: 名無しさん@おーぷん
しえん

127: 名無しさん@おーぷん

勇者「勇者は魔王をたおさなければいけない」

勇者「それなのにこれじゃあ……」

魔王「もう答えはわかってるでしょ、あなたも」

勇者「まさか……」

魔王「そう。勇者と魔王の争いを仕組んだ理由、それは」








魔王「勇者という最強の人間兵器を作ることよ」

128: 名無しさん@おーぷん
なにいいいいぃ!!

129: 名無しさん@おーぷん
まさかの
人類共通の敵を作って戦争をしないとかじゃないのな

130: 名無しさん@おーぷん

勇者「勇者を、兵器に……?」

魔王「自分の国がどうやって発展してきたのかは、わかってるでしょ」

魔王「この国は、あらゆる戦争で勝利を重ねてきた」

魔王「戦争の勝利の裏には、勇者がいたのよ」

勇者「……お前は、勇者が戦争に駆り出されていたっていうのか」

魔王「そうよ。そしてもちろん、そのことが表に出ることはない」

魔王「ときの流れの中で、勇者はひっそりと消える」

勇者「だけど……これだけだったら、仕組んだなんて言えない」

勇者「強くなるために魔物と戦う必要があるなら、それも仕方のないことだ」

魔王「まったく。真面目なあなたは、その事実すら受け入れるのね」

魔王「……でもまあ、これだけだったら仕組んだとは言えないわ」

131: 名無しさん@おーぷん
けっこう予想外で面白い

132: 名無しさん@おーぷん

魔王「ええ。さっきの魔物の話とすこし似てるけど」

魔王「あなたはどうして魔王をたおす旅に出たの?」

勇者「それが、使命だったからだ」

魔王「はぁ、使命か。よくそこまで一貫してるわね」

勇者「なんだその目は」

魔王「べつに。それより次はこれを見て」

勇者「……なんだこれは」

魔王「勇者と魔王の争いの記録の一部よ」

133: 名無しさん@おーぷん

『XXX、魔王と勇者激しく争う。

 XXX、新たな魔王と勇者、たたかう。両者の戦いにより集落が滅ぶ。

 XXX、魔王と勇者この世に生を受け闘う。死者数百人。

 XXX、魔王と勇者復活、街での戦いにより死者数千人。

 XXX、何度目の復活か不明、勇者と魔王因縁の争いにより山を消滅させる。
  
    すべての戦いにおいて勇者が、勝利をおさめている』




魔王「この記録を見てのとおり、勇者が常勝だったのは歴史が証明してる」

魔王「魔王も普通だったら、勝てないって気づくと思うのだけど」

勇者「だけど現に、こうして戦いを繰り返してるだろ」

134: 名無しさん@おーぷん

魔王「ていうか、私ってなにか人に恨まれるようなことした?」

魔王「私じゃなくてもいい」

魔王「歴代の魔王がいったいなにをしたっていうの?」

勇者「……歴代の魔王には、魔王城付近の小さな町を破壊したものもいた」

勇者「比較的新しいのであれば、国の要人を誘拐したことだってある」

魔王「ああ、そういえばあったかもね」

魔王「でもそれならそれで、どうして魔王はしなかったのかしら?」

勇者「なにを?」

魔王「人類の脅威なんだし。虐殺ぐらいしていけばよかったのに」

魔王「どうにも中途半端じゃない?」

135: 名無しさん@おーぷん
自分のホームグラウンドで闘いたいんだろ

136: 名無しさん@おーぷん
勇者戦争で使ったら強いよなとは思うが魔王の理屈はちょい強引だな
続きまだ

137: 名無しさん@おーぷん

魔王「私には、勇者が魔王を攻めるための、
   理由作りを魔王にさせているように思えるの」

勇者「勝手な解釈、いや。もはやこじつけだな」

勇者「お前の言いかたでは、魔王は人間の言いなりだったってことになる」

魔王「そう言ってるのよ」

勇者「!」

魔王「魔王が勇者との争いを繰り返したのは、逃げられなかったから」

勇者「逃げられないって、どういうことだ」

魔王「魔王には監視がいたのよ、人間のね」

勇者「だからそんなこじつけ……」

魔王「こじつけじゃない」

魔王「証拠なら、きちんとあるわよ」

138: 名無しさん@おーぷん

魔王「言ったでしょう?」

魔王「私がすべてを証明する答えだって」

勇者「……」

魔王「魔物の長でありながら、人間のすがたをした私が、ね」

勇者「どういうことだ?」

魔王「あなたは不思議に思ってたわよね? 私の人間じみたすがたについて」

勇者「それが今の話となんの関係がある?」


魔王「私の父は、その前魔王だった。
   私の母はそんな前魔王の監視役だった」


勇者「……なに」



魔王「私はね――魔王である父と人間である母から生まれたのよ」

139: 名無しさん@おーぷん
ここに来て一気に予想外展開来たな

140: 名無しさん@おーぷん

勇者「なにを、なにを言ってるんだ……!」

魔王「ありのままの事実を話しただけよ」

勇者「うそを言うなっ!」

魔王「そうね。私もうそだったら幸せだったかも」

魔王「……でも。だったら、私のこのすがたはなに?」

魔王「どうして魔王であるはずの私が、人間のすがたをしてるの?」

勇者「……っ!」

魔王「私も父と母がどんな経緯をたどって、
   そういう関係になったのかは知らないけどね」

141: 名無しさん@おーぷん
お、更新されてる

142: 名無しさん@おーぷん

魔王「勇者と魔王の争いは仕組み、
   勇者を兵器として使える段階にまでする」

魔王「そして、そのために魔王までもが人間に利用されてきた」

勇者「だけど、どうして魔王は逃げない?」

勇者「いくら監視がいるからって、逃走は不可能ではないはず」

魔王「魔王はどこに逃げても、場所を特定されるようになってたの」

勇者「そんなことできるはずが……」

魔王「できる。あなたにもあるじゃない、右腕の刺青が」

勇者「……刺青? これが場所を特定するためのもの?」

魔王「道具屋の店主に勇者であると証明するなら、刺青は普通に彫るだけでいい」

魔王「わざわざ魔術で施す必要はないわ」

143: 名無しさん@おーぷん
SFファンタジーっていうのかな

144: 名無しさん@おーぷん

勇者「だけど、どうして僕にまで!?」

魔王「勇者が旅のつらさから逃げ出さないって保証が、
   どこにあるの?」

勇者「僕は逃げ出すなんてマネはしない!」

魔王「……わかってるわよ、生真面目なあなたが逃げないってことぐらい」

勇者「……それだけなのか?」

勇者「それだけで魔王は、人間たちに屈したっていうのか?」

魔王「……ほかにも理由があるって、そう言いたいの?」

勇者「ああ」

勇者「僕が魔王だったら、真っ先に勇者を殺しにいく」

145: 名無しさん@おーぷん
>>144推理系じゃね?

146: 名無しさん@おーぷん
>>145
ありがとう。
こういう陰謀系?っていいなって思って

147: 名無しさん@おーぷん

魔王「それはできないのよ」

勇者「なぜ?」

魔王「潜在的な能力に関しては、
   勇者と魔王はハナから最高値に達してるのよ」

勇者「言ってる意味がわからない」

魔王「魔王である私たちは、最初から自信の能力の扱いを熟知している」

魔王「それに対して、勇者は能力の扱いかたを理解していない」

勇者「じゃあ、僕はもう魔王をたおすだけの力はもってる……?」

魔王「まあ、あなたの場合は魔力の爆弾みたいなものだけどね」

勇者「爆弾……」

魔王「下手に能力の使い方のわからない勇者を刺激すれば……」

勇者「……自分にまで被害が及ぶ可能性があるってことか」

魔王「正解」

148: 名無しさん@おーぷん

勇者「……」

魔王「受け入れられないって顔ね」

勇者「当たり前だ」

勇者「ようは人類と魔物は、裏でつながっていたってことじゃないか」

勇者「僕はたんなるあやつり人形だったっていうのか……」

魔王「……」

勇者「でも……待て」

魔王「まだあるの?」

勇者「ある!」

勇者「もしお前の話が本当だとしたら、
   勇者が勇者であると特定できなきゃいけないっ!」

149: 名無しさん@おーぷん
なんかスゴイな

150: 名無しさん@おーぷん

勇者「国中の人間を調べるのか?」

勇者「この国の人口から考えて、そんなことはできないっ!」

勇者「なにより! それを国民に気づかれないで、
   実行するなんて……不可能だ!」

魔王「そんなに難しいことでもないわ」

魔王「そうよ、勇者の特定方法を説明してくれたのは、あなたじゃない?」

勇者「そんなわけあるか!」

魔王「覚えてないの、あなたが私に教えてくれたこと?」

魔王「『洗礼を受けるのは、国民の義務のひとつになってますし』」

勇者「!」

151: 名無しさん@おーぷん
キタ━(゚∀゚)━!!

152: 名無しさん@おーぷん

勇者「洗礼? 洗礼が勇者の特定手段?」

魔王「幼児洗礼。全国民がごく自然に受ける儀式だし、
   それを勇者特定の手段なんて、誰も思わないでしょ?」

魔王「あとは英才教育でもして洗脳すれば、
   勝手に魔王をたおしに行く勇者の完成ってわけ」

魔王「あなたみたいな勇者がね」

勇者「そんな……そんなことって……」

魔王「そろそろ納得してくれないかしら?」

魔王「ちょっと気分が悪くなってきたから、宿に戻りたいの」

勇者「待て、待ってくれ!」

勇者「もうひとつだけ、納得いかないことがある」

魔王「……私と話をしていて、
   ここまで食いついてくれたのは、あなたがはじめてよ」

153: 名無しさん@おーぷん
待ってました!

154: 名無しさん@おーぷん
色んなとこにフラグみたいなんが立てられてて感心してる

155: 名無しさん@おーぷん

勇者「僕の言ったことを覚えてるか?」

勇者「『歴代の勇者で、教会送りにならなかった者は誰ひとりいない』」

魔王「ああ、そのことね。それがなにか?」

勇者「この旅は、人間兵器としての勇者を作るのが目的なんだよな?」

勇者「にも関わらず、すべての勇者が教会送りにされてるって、おかしいだろ」

魔王「記録から考えても。国が勇者を死なすように、
   仕向けてるのは間違いないわね」

勇者「戦士や賢者たちのように、復活させられない可能性だってあるんだ」

魔王「なら、発想を逆転させてみれば?」

勇者「逆転?」

魔王「勇者を教会送りにするメリットが、なにかあるのよ」

156: 名無しさん@おーぷん
だんだん先が読めてきた

157: 名無しさん@おーぷん
しえん

158: 名無しさん@おーぷん

勇者「僕を死なせて、得るものなんて……」

魔王「……そうね。たとえば、教会に送られてから、
   意識が戻るまでにどれぐらい時間がかかる?」

勇者「早ければ一日、遅ければ三、四日はかかる」

魔王「それだけの時間があれば、あなたのからだを
   いじくりまわすことも、十分にできるわね」

勇者「……は?」

魔王「まだまだ開発途中の医薬品や回復系の魔術に、
   これほど、つかりきった肉体ってあるかしら?」

魔王「……いや、ない」

魔王「それに。勇者のからだを調べられる機会って、そうないわよね」

勇者「そういう、ことなのか……?」

159: 名無しさん@おーぷん
こええよ…

160: 名無しさん@おーぷん

魔王「さらに、もうひとつ。あなたが私に説明した復活の感覚」

魔王「あれも興味深いわよね」



魔王「『死んでから意識が戻ったときは、
   自分のからだが自分のものじゃないみたいで』」

魔王「『絶えず、違和感がつきまとう』」

魔王「『しいて言うなら、魂が肉体にとまどっているような感覚です』」



勇者「なにが……なにが言いたい?」

魔王「仮に腕が丸ごと切断されたとして、
   それはいったいどうやって治すの?」

勇者「それは……」

魔王「神との契約は、死へ向かう魂を肉体に戻すことの許可だけのはず」

勇者「……」

魔王「あなたのからだ――それ、本当にあなたのからだ?」

161: 名無しさん@おーぷん
おい…

162: 名無しさん@おーぷん
うぎゃあああああああああああぁ

163: 名無しさん@おーぷん
面白い

164: 名無しさん@おーぷん
ジャンル変わってね?

165: 名無しさん@おーぷん
なんでまだ完結してないのにまとめられてんだ

166: 名無しさん@おーぷん
え、まとめられてるの

167: 名無しさん@おーぷん

勇者「あ、ああぁ……」

魔王「まあでも、これには証拠はない。邪推ってヤツなのかもね」

勇者「じゃ、じゃあ今の教会の話は……」

魔王「私のただの想像」

魔王「でも、からだをいじくりまわしてる可能性は高いわ」

勇者「……なにを根拠に言ってる?」

魔王「やっぱり」

勇者「?」

魔王「あなた、さっきからこのニオイに気づいてないんでしょ?」

勇者「ニオイ? ニオイなんてしてないぞ」

魔王「私が魔物を引きよせる香水を使ったの、見たでしょ?」

魔王「あまりにもニオイがキツすぎて、気分が悪いのよ」

勇者「!!」

168: 名無しさん@おーぷん
そういうことなのか!

169: 名無しさん@おーぷん
きたか!

170: 名無しさん@おーぷん

魔物「あなたの嗅覚は、とうの昔におかしくなってるのよ」

勇者「……僕の鼻が?」

魔王「はじめて顔合わせをしたときから、 
   そうじゃないかとは思ってた」

魔王「『とても素敵なかおりだと思いません?』って、
   コーヒーのこと聞いたの、覚えてる?」

勇者「なんとなくなら」

魔王「焙煎したコーヒーのニオイよ」

魔王「鼻がつまってても、まずわかる」

魔王「なのにあなたは『よくわかりません、僕には』って答えたのよ」

勇者「……」

魔王「あなたの嗅覚はとうの昔に機能を失ってたのよ」

魔王「その原因が魔術か薬か、あるいは肉体をいじられたことなのか」

魔王「そこまでは判然としないけどね」

171: 名無しさん@おーぷん
続きはよ

172: 名無しさん@おーぷん
びっくりした
人型魔物と合成させられたかと思った

173: 名無しさん@おーぷん
ヤバイな
前半にめっちゃヒントばらまかれてたんだな

174: 名無しさん@おーぷん
鼻が機能してないとかすぐわかるんじゃねとかツッコまない

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